星咲の脳内が垣間見れます。
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「いい天気だなぁ、ヴェルグ」
雑木林が点々と存在する草原の、小高い丘の上でフレースは立ち止まり、新鮮な空気を身体中に吸い込んだ。
立ち止まれば、頭上を飛んでいた鷹が慣れた動作で左肩に降りてくる。
肩に感じる重みや爪の感触は、フレースにとって全く負担にならない。寧ろ、安心する。
太陽に温められた風がそよそよと吹く中で、心地よさに目を細めながら、フレースは愛鷹であるヴェルグを優しく撫でた。
「少し自由に飛んでくるといい。行っておいで」
右腕を差し出せばそこに移り乗り、促せば優雅に羽ばたいていく。
薄雲が浮かぶ水色の空に、美しい鷹が颯爽と舞う光景は決して見飽きることはない。
数秒の間だけ見入って、フレースは伸びをしたあと、ごろんと丘に寝転んだ。
まばらに生えた草がフレースの肌をくすぐる。
息を吸えば、瑞々しい草と土の匂いがした。
ゆっくりと目を閉じて、大地の鼓動や大空の息吹を身体全体で感じ取って、フレースは瞼を上げた。
彼の真上の上空で、ヴェルグが滑らかに円を描いている。
苦笑ともとれる笑みを零して、フレースは首に下げている鷹笛を唇に挟んで息を送った。
発された合図に呼応するようにヴェルグが鳴き、フレースの視界から外れて飛んでいく。
ヴェルグは強いし、頭も良い。
目の届かない林や森に行ったって、そうそう不安になどならない。
いつも、主人であるフレースの傍にいて、忠実に命令を聞いてばかりいるから、こんな時くらいは自分の意思で自由に過ごして欲しい。
羽を伸ばすという言葉がぴったりだな、とフレースは一人小さく笑った。
太陽の気配を瞼越しに感じながら、フレースは旅を共にしている青年のことを思い出す。
彼に知らせずにふらりと来てしまったから、今頃彼は呆れているだろう。
一日一善を心掛ける彼が、迎えにきてくれるといい。
あるいはヴェルグが、起こしてくれてもいい。
敵襲なんかも、面白いかもな。
やがて穏やかに、心地よい眠気がフレースを包み込む。
深く息を吐いて、そよぐ風に身を任せれば、夢の中へと墜ちていくのは早かった。
とある日の、平和な午後の風景。
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