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灰色の空、肌を刺す空気。
桜舞い散る中で入学式やら何やらを始めたこのご時世には似合わない気候だ。
朝に見た天気予報では、今日は雨になると厚化粧の女が告げていた。
コロコロ変わる天気に振り回されがちな天気予報も、今日ばかりは当たっているらしい。
肌に纏わりつく風が、徐々に雨が降るそれに変わってきた。
指先から赤くなっていく手を見て、手袋をはめてくるんだったと口の中でぼやく。
ふと、脳裏にある光景が浮かんだ。
今歩いている進路から外れた、小さな公園の端。
そこで仲良く寄り添うように立っている二本の桜。
近所にある公園だが、あの辺りの道は使っていないから最近ではあの公園に寄ることも、桜の木を見ることもない。
氷のような腕時計を見てみる。
時間に余裕がある。
思い出したら気になって、靴の爪先を進路方向からずらすと、懐かしくさえ感じられる公園へと向かった。
あの桜はかなりの歳なのだと、小さい頃に近所の老人から教えてもらった記憶がある。
その為、咲く桜の花も昔と比べると随分減っていると悲しげに語っていたことも。
いつからだったろう、あの老木を見なくなったのは。
大きく広げた枝いっぱいに可憐な薄紅の花を咲かせているだろうか。
自然と足が早くなる。
厚く空を覆う雲が、遂に大地に恵みをもたらした。
コンクリートには恵みにならないが。
外気に晒している顔にポツポツと急かすように水滴が落ちてくる。
冷たい雨。
あの老木は大丈夫だろうか。
白い息がたなびく。足跡を遺すように。
公園のフェンスよりも、当然桜が先に見えた。
老木が昔のまま立っていたことに安心して、それより早くその淡い桜色に目が細まる。
街中やテレビで見るよりは、やはり少ない花の数。
しかし目の前の満開の桜は、どの桜よりも綺麗だった。
花が少ないが為に剥き出しになっている枝も、小さな花も。
春の陽気から一転、突然訪れた寒さに懸命に耐え、咲く姿はとても美しかった。
公園に入って、幹の側に立って眺める。
雨宿りには向かなくても、老木がそっと優しく包み込んでくれるようで、体温が少し上がった気がした。
雨脚が強くなる。
何分か、何十分だろうか。
暫くして、視界を雪が滑った。
どうりで寒いわけだ。
朦朧としていた意識を明瞭にして景色を眺めてみると、おかしいことに気付いた。
周囲には霧のように水飛沫が踊り、雨がコンクリートを叩き付ける音が満ちている。
雪なんか、降ってはいない。
なのに視界には雪が空から墜ちてくる様が映し出されている。
違う。
これは雪じゃない。
雪よりも、可憐で。
雪よりも、鮮やかな。
雪のように、溶けたりしない――
さくらの はなびら
気付けば、自分の立つその周りには桜が降っていた。
舞っているんじゃない。
強い雨に叩かれて、しがみついていた枝から脆くも零れ、雨粒に攫われるがままに地面へ。
墜ちている。
雨のように降りしきるその花弁は茶色い地面を仄かに濃くなった桜色で染めあげ、老木の足下に桜色の絨毯をこしらえていく。
老木は更に凍えるくらい冷たい外気に晒され、木肌を雨で濡らされ、震えるように風に揺れた。
桜の雨が段々と減っていく。
水色の空、澄んだ空気。
黒いコンクリートの上を歩く。
涼しい風が肌を撫ぜ、髪が揺れた。
不思議な時間から放たれ、五感が冴えている。
呼吸の仕方も思い出せた。
近所の老人から教えてもらった話も。
桜には、不思議な力がある。
心の綺麗な人間には、その力が通じるのだと。
あの大雨の中濡れなかったこと。
進路を外れて公園に向かった時間から、時が進んでいなかったこと。
これらが、桜の不思議な力なのだとしたら。
あの老人の話を笑い飛ばした自分を叱ってやろう。
えー…と。
訳の分からない話ですみません。
桜の雨が降る、って情景が書きたくて。
書いてるうちにあっちゃこっちゃ話が飛んだり何だりでこんなのになってしまいました。
こんな文章書いたの始めてかもしれない…。
一人称で短編の話。
でもやっぱりファンタジーになるのはどうしてか自分。
タイトルにセンスの無さが窺われますな。
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