星咲の脳内が垣間見れます。
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lackism
【欠落主義, 欠落思想, 欠落学説, 欠落理論, 欠落様式】
その人は、いつもキセルを吸っていた。
「やあ」
顔のないその人は紫煙をくゆらせて僕に笑いかけた。
取っ手のないドアを閉めて、僕も笑いかけた。
「最近よく来るね」
「それはこっちの台詞」
コンコン、と竹筒に灰を落として縫い目のない座布団と抹茶を勧めてくれる。
七篠さんはいつもこうだ。
お菓子が足らない。
「結構なお点前で」
「結構なお世辞で」
二人して粉っぽいお茶を飲む。
僕はいつも通り一口だけ飲んで離れた場所にお茶を置いた。
七篠さんはいつもこうだ。
点て方が足らない。
“七篠”というのは目の前のこの人の姓だ。
名はあるけど教えたくないらしい。
なんでも、何とも古めかしくて恥ずかしいからだそうだ。
僕はといえば、姓名がない。
“ない”ということは七篠さんに言われて初めて知ったから、喪失感も不足感もない。
でも、なくてよかったとは思ってる。
僕の好きなこの場所は、何かが“欠けた”ものだけが入れる場所らしいから。
空のない風景。
ガラスのない窓。
支えのない天井。
質感のない壁。
スイッチのない電気。
短針のない時計。
引き出しのないタンス。
足のない机。
座る場所のない椅子。
端のない床。
顔のない七篠さん。
窒素のない空気。
姓名のない僕。
その他諸々。
………ん?
「ねぇ、あれ新入り?」
「そそ、仲良くしてやってくれ」
「……何、あれ」
「耳のないネコ型ロボット」
……………わあお。
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