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星咲の脳内が垣間見れます。
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伝えて、最後に謝った私に、チャイは静かに、ただ、「そうか」と呟きました。

それから、長い前髪から覗く目を、そっと伏せて。

私を責めることも、怒ることも、軽蔑することもなく。

それきり何も言わず、私に背を向けて。

以来、チャイに呼びかけても反応がありません。

消えてしまったのか、どこかにいてくれているのか。

後者だと、思いたいのですが。





どのキャラクターを見ても、変なところで皆私に似ているなあ、としみじみ思います。
チャイも、アカネも、ファルザームも、ラスティも、みんな。
みんな、ごめんね。

いつも傍にいてくれてありがとう。

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「フ、フレースさんっ!」

「ん?」

「どうやったらフレースさんみたいな凄い鷹匠になれるんですかっ?秘訣とかあるんですかっ?」

「秘訣かぁ…」

「…(わくわく)」

「秘訣なんてないよ。俺はただヴェルグが大好きなだけだ。 な、ヴェルグ」

「…そうっ、すか…(ああ、やっぱりフレースさんはフレースさんだった…)」





なんて。
弟子入り志願者とか「コツとかあるんですか?」って訊かれたらこう返したらいいと思う。
な、フレース。






「いい天気だなぁ、ヴェルグ」
雑木林が点々と存在する草原の、小高い丘の上でフレースは立ち止まり、新鮮な空気を身体中に吸い込んだ。
立ち止まれば、頭上を飛んでいた鷹が慣れた動作で左肩に降りてくる。
肩に感じる重みや爪の感触は、フレースにとって全く負担にならない。寧ろ、安心する。
太陽に温められた風がそよそよと吹く中で、心地よさに目を細めながら、フレースは愛鷹であるヴェルグを優しく撫でた。
「少し自由に飛んでくるといい。行っておいで」
右腕を差し出せばそこに移り乗り、促せば優雅に羽ばたいていく。
薄雲が浮かぶ水色の空に、美しい鷹が颯爽と舞う光景は決して見飽きることはない。
数秒の間だけ見入って、フレースは伸びをしたあと、ごろんと丘に寝転んだ。
まばらに生えた草がフレースの肌をくすぐる。
息を吸えば、瑞々しい草と土の匂いがした。
ゆっくりと目を閉じて、大地の鼓動や大空の息吹を身体全体で感じ取って、フレースは瞼を上げた。
彼の真上の上空で、ヴェルグが滑らかに円を描いている。
苦笑ともとれる笑みを零して、フレースは首に下げている鷹笛を唇に挟んで息を送った。
発された合図に呼応するようにヴェルグが鳴き、フレースの視界から外れて飛んでいく。
ヴェルグは強いし、頭も良い。
目の届かない林や森に行ったって、そうそう不安になどならない。
いつも、主人であるフレースの傍にいて、忠実に命令を聞いてばかりいるから、こんな時くらいは自分の意思で自由に過ごして欲しい。
羽を伸ばすという言葉がぴったりだな、とフレースは一人小さく笑った。
太陽の気配を瞼越しに感じながら、フレースは旅を共にしている青年のことを思い出す。
彼に知らせずにふらりと来てしまったから、今頃彼は呆れているだろう。
一日一善を心掛ける彼が、迎えにきてくれるといい。
あるいはヴェルグが、起こしてくれてもいい。
敵襲なんかも、面白いかもな。
やがて穏やかに、心地よい眠気がフレースを包み込む。
深く息を吐いて、そよぐ風に身を任せれば、夢の中へと墜ちていくのは早かった。



とある日の、平和な午後の風景。






「…よし。行くぞ、ヴェルグ」
仲間達がいなくなった部屋で、フレースはごくりと喉を鳴らした。
右腕に止まる鷹に声をかけ、ゆっくりと足を踏み出す。
覚悟を決めて石造りの扉に触れた刹那、フレースは仲間達と同様に、その場から消えた。


一瞬意識が途切れた後、フレースが目を開けるとそこには暗闇が広がっていた。
左手の松明が照らし出す明かりには、フレースとヴェルグの影だけが浮かび上がっている。
「おい、皆いるか?」
焦りを覚え辺りを照らしてみるものの、誰の姿も見えない。
フレースの問い掛けは闇に溶け、松明が燃える音だけが静寂を破っていた。
「どういうことだ…?」
立っている場の幅は5m、高さは7mほどで、床は真っ直ぐ奥へと伸びているようだった。
閉所ではないものの、ヴェルグは暗闇に弱い。
鷹使いの身としては辛い状況だ。
「…ヴェルグ」
腕の愛鷹を見れば、警戒しているとも怯えているともとれる表情でじっと身構えていた。
フレースを掴む爪の力も、幾分強まっているように感じる。
ここで自分がうろたえれば、それが鷹に伝わって不安にさせてしまう。
主人である自分がしっかりせねばと、フレースは毅然とした態度で松明を握り直し、闇を見据えた。
「行こう」
ヴェルグが僅かに羽を広げ、姿勢を整える。
その横顔に安堵を覚えながら、フレースは奥へと足を進めていった。


松明を持たぬ者への罠なのか廊下に仕掛けられていた落とし穴を通り過ぎ、フレースは廊下を歩き続けた。
闇が、果てはないのかと錯覚させる。
フレースの堅い足音と炎の音だけが響き、やがて彼らの前に扉が現れた。


カシャン


が、喜んでばかりではいられなかった。
扉の前で立ち塞がっていたのは、4つの手を持つ骸骨。
白骨の手にはそれぞれブロードソードが握られ、深い闇をたたえた眼腔はフレースに狙いを定めていた。
「ヴェルグ、離れろ!」
号令と共に腕を払えば、鷹の爪が離れ、羽音が頭上から降ってくる。
鳥目であるヴェルグを、薄暗闇の中で戦わせるわけにはいかない。
羽音は、フレースから離れた場所から響いている。
つまり、危険に晒されるような位置にはいない。
ヴェルグの安全を確信したフレースは、松明を床に置き、すらりと鞘から剣を引き抜くと左手に盾を構えてスケルトンウォーリアを睨み付けて対峙した。
一人で、しかも薄暗闇での戦闘に不安はある。
けれど今の彼には、応戦するより他に道はない。
フレースが動くより先に、スケルトンウォーリアが躍り出て剣を勢いよく降り下ろす。
「──ッ!!」
刃先は明らかにフレースの喉を狙い、避けきれなかったフレースは歯を食いしばって目を堅く閉ざした。
血肉が鉄に切り裂かれる湿った音がフレースの耳に届き、ほぼ同時に喉のあたりに衝撃が走る。
だが、フレースに永遠の瞬間は訪れなかった。
「…?」
不思議に思い恐る恐る瞼を上げる。
開けたフレースの視界に、あるものが舞った。



──鷹の 羽 。



「……ヴェ、ルグ?」
目を見開き、呆然と足下に視線を落とす。
そこには、紅い血の海に沈んだ愛鷹の姿。
体中の血が、サッと引いた。
「ヴェルグ!おい、ヴェルグ!!」
剣と盾を放り出して屈み、ヴェルグを抱き上げる。
触れた指先に伝わる鼓動は弱々しく、息もいつ止まるやもしれないほどか細いものだった。
腕の中でぐったりと血を流すヴェルグの身体がどんどん冷えていく。
「ヴェルグ…!!」
応急処置を施そうとしたフレースの視界の端で、スケルトンウォーリアの剣が振り下ろされる。
無駄だと分かっていながらも、ヴェルグを抱く右腕はそのままに、フレースは左腕を掲げた。

もう、自分はどうなったっていいから。
腕なんて、失ったっていいから。
どうか、どうかヴェルグだけは──。

左腕に刃が食い込もうとすると同時に、衝撃がフレースのこめかみを駆け抜けた。
「…ッ?!」
覚えのある痛みに咄嗟に振り向けば、そこには、愛鷹の姿があった。
目は生命に満ち、柔らかい身体からは温もりが伝わってくる。
「え、……ヴェル…グ…?」
掠れた声で呟き、腕の中へと視線を戻す。
右腕からは血に塗れたヴェルグの身体は消えていたが、生々しい死の感触は残ったままだった。
「ヴェルグ………ヴェルグ、無事で良かった……」
震える手で鷹を撫で、肩に止まる温かさに顔をうずめる。
ヴェルグは、静かにフレースへと身を任せ、すりすりと擦り寄った。
「ヴェルグ…」
名を呼んで、涙腺が緩みそうになるのをぐっと堪える。
怖かった。
何も考えられなくなって、ただ怖くて。
この存在の喪失は、全ての喪失だと、過言などではなく、そう痛感した。
あれは幻だったけれど、決して実際に起こらないことではない。
ヴェルグは、自分が想うのと同じくらい、あるいはそれ以上に、自分を慕い、想ってくれている。
主人の危機となれば、躊躇うことなく盾となるだろう。
そんなこと、させない。させるわけにはいかない。
己を繋ぐものは鷹で、鷹を繋ぐのは己なのだから。


唇をきゅっと引き結び、フレースは目の前に立ちはだかる扉を仰ぎ見た。



汝 力を求めしか



刻まれた文字を頭で理解するより早く、フレースは心の中で答えた。



欲しい。
力が。
大切なものを守り、自分を守る力が。

──欲しい。



無言の問いに無言で答えれば、音もなく重厚な扉が開き、隙間から溢れた光が暗闇を飲み込んでいく。
眩い光の洪水の中、フレースはその奥をじっと見つめ、肩に感じる爪の鋭さや確かな存在の温もりに感謝と喜びをかみ締めつつ、歩きだす。
あの冷たさと決意を、胸に刻んで。






「だからてめぇ味付けが濃いっつってんだろーだよ!!!!!」

怒号と共に、ほかほか食堂がまるで生き物かのようにびくりと揺れた。

「っせぇ!これは俺の料理だ!いちいちケチつけんじゃねぇよ貧乏くせぇ味付けしやがって!!」
「ンだとコラ!余計な味付けで素材の味惨殺しやがって!謝れ!蓮根に謝れ!」
「だーかーら、余計じゃねぇっつったら何度言ったら分かんだよ果皮抜かれた糸瓜みたいな脳味噌しやがって!!こんくらいの味付けの方が蓮根の旨みを引き出せんだよ!!」
「んなわけあるか!旨み引き出すどころかこれが蓮根かどうかも怪しいくらいに蓮根の味を破壊してんじゃねぇか!お前蓮根の味ちゃんと分かってねぇだろ!!」
「んなことねぇよ分かってるっつうの!だからこそこの味を最大に生かすべくこんだけ味付けして引き立ててんだろ?!飯が進んでしょうがねぇっつの!!」
「飯が進むだけが美味い料理じゃねえんだよ!!」
「だーもう!俺の料理に口出すなよ!お前そう言ってたじゃんかよ!」
「俺が口ださねぇっつったのはそれぞれの定食についてだこのトリ頭!!これは個人の定食じゃねぇ、ほかほか食堂全体の定食だ!全員で味揃えねーと客が困んだよ!!」
「そういうことはさっさと言えや!!」
「てめぇがここに来た時に行ったじゃねぇか!!」
「覚えてねーよ!!」
「覚えてろ!!ついでに俺の味付け具合も覚えとけこれが俺の里芋だ!!」


「…うま」
「たりめぇだ」


「…もう終わった?夕霧さん、柏木さん」



ほかほか食堂は今日も賑やかである。

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【 ♥ イラスト提供:Night on the Planet ♥ 】